この写真集の撮影地は、北海道の炭鉱跡、東北の松尾鉱山跡,飛騨の神岡鉱山跡である。
これらの鉱山は、かつて石炭や貴重鉱物資源の採掘地として日本有数のものであった。
いま日本には、かつての栄華の跡をとどめる鉱山跡が各地にある。
ほとんどの鉱山跡は、ひと里離れた山中にあって、訪れる人もなく、住居跡や施設跡がそのままの姿をとどめている。
山中の冬はひとしお厳しい。写真家は、冬の鉱山跡を訪れているうちに、人の暮らしの残影に降り積もる雪の美しさにわれを忘れたのである。
それは、たんに造形的に美しいだけではなく、人がかつてそこに暮らし、それもそう遠くないころの賑わいをわずかに伝える。
これらのぬくもりのカケラの多くが、写真家をこの地に招いたのである。 |